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4TEEN/フォーティーン/石田衣良 新潮社 ★★★★★

直木賞受賞作。東京・月島で暮らす14歳の中学生男子4人。
自称・平凡で平均的中学生のテツロー、成績優秀で大人受けもいいジュン、
180cm、100kgの巨漢で貧しい長屋住まい、働かず家族に暴力をふるう父を持つダイ、
早老症で老人のような肉体と残り少ない寿命を持ち、超高層億ションに住むナオト。
家庭環境も個性もバラバラなのに強い仲間意識で結ばれた4人が1年間に体験した8つの物語。

現代日本版「スタンド・バイ・ミー」だなぁとつくづく思いながらも、
それが否定的な意味にはならない。
わたしはこの著者の大ファンである。
デビュー作「池袋ウエストゲートパーク」以来、現代日本の特に若者を取り巻く風俗や
危険な社会現象をリアルに描き、主人公も例外なくその世界の住人でいながら、
人間としての本質は常に健全でまっとうなところが好きなのだ。
作品が伝えるメッセージもけっして世の中を批判、絶望せず広い意味の愛にあふれている。
それは著者自身の人柄がそのまま反映されているのだろう。
人間や社会を見る目が「人間性善説」というか、
どんな状況であれ希望や愛を見つけようというまなざしを感じる。
本作の主人公たちも、非行少年でもなく、いろんな意味で危険な子供でもないが、
世間並みにエロ本の交換もすれば、キャンプだと親をだまして新宿で野宿してクラブやストリップを探検もする。そのうえ援交女子高生をナンパ、金額交渉の末仲間への贈り物にしたり、
出会い系サイトで知り合った人妻の家庭問題や、
プチ家出中の女子高生が抱える問題に関わったり・・・
もしわたしに子供がいたら、心配と恐怖でいたたまれないだろうと思うけれど、
今の日本のこれが必要以上の誇張もない等身大の姿なのだろう。
そんな魑魅魍魎的世界を、4人の少年たちは健やかな精神で助け合い団結しながら危険を回避し、問題を解決しながら泳ぎきり、成長していく。
今の日本は夢も希望もないと言ってしまうのは簡単だけど、
本書を読むと一筋の光が見えるような気になる。
気持ちよくほろっとさせられ、爽やかな読後感が尾をひくところも「スタンド・バイ・ミー」だ。
by gloriaxx | 2004-09-28 18:30 | 評価 ★5


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