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猛スピードで母は/ 長嶋 有 文藝春秋 ★★★★★

第92回文学界新人賞受賞、第125回芥川賞候補になった「サイドカーに犬」
第126回芥川賞受賞作「猛スピードで母は」を収録。
「タンノイのエジンバラ」でファンになり、読む順序としては前後したけれど、
デビュー作から新人とは思えない実力をひしひし感じる。
著者は1972年生まれだって、すごい・・・・

この人の作品の登場人物は世間とか社会からドロップアウトしてたり、
どこかまっとうじゃない感覚を持ってたりするんだけど、人間としての感情の機微というか、
感性というか、そういう部分はすごくちゃんとしている。
「清く正しく完璧じゃない人生でも別にいいんだ」って思えて勇気づけられるのがいい。
「サイドカーに犬」は、犯罪者(といっても凶悪犯ではない)でも家庭もあれば恋愛もするし、
人間的には魅力的だったりする。そして、犯罪者の子供にも普通の人生はあって、
それは他の人のように続いていくものである。というあたりまえの部分をサラっと描いて
しみじみ心に浸透してくる。
主人公の少女は子供なのに大人に気を遣ったり、いろいろ考えすぎたりして、
まるで子供の頃のわたしだと思った。
by gloriaxx | 2004-10-03 16:14 | 評価 ★5


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