カテゴリ:★4( 87 )

11分間 OnzeMinutos /パウロ・コエーリョ 角川書店★★★★

-セックスなんて11分間の問題だ。
脱いだり着たり意味のない会話を除いた「正味」は11分間。
世界はたった11分間しかかからない、そんな何かを中心に回っている-

ブラジルの田舎町に育った美しい娘・マリーアはダンサーになるためスイスへ。
やがて現実に失望し、プロの娼婦になった彼女が到達したのが冒頭の3行。
日記をつけ、故郷に帰った日のために牧場経営に関する本を読み、
淡々と仕事に徹するマリーアは恋に落ちないことを自らに課していたが、
ある日、運命的な出会いをしてしまう。

2つの文体で構成された不思議な味わいの小説。
「プリティ・ウーマン」文学バージョンという感じだが
どの時代、どの国が舞台であっても違和感のない普遍的な物語である。
地の文はシンプルで、人生の真実を短いフレーズで的確に表現し、
一方、マリーアが書く日記の文体は文学的で美しく暗示的。
客観的に自己と現実を見つめて何をすべきか、すべきでないかを決断する
マリーアの知性と潔さは爽快だ。
あらかじめ揶揄しておいてパターン化を外すハッピーエンディングのセンスも◎!

-恋愛感情が相手の存在よりもむしろ不在と連動していることに気がついた-

こんな風にはっとさせる一文があちこちに、しかもさりげなく散りばめられている。
心に余裕のあるときにじっくり味わいながら読むのがおすすめ。
('04 11 11)
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by gloriaxx | 2004-11-12 15:11 | ★4

薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木 江國香織 集英社 ★★★★

9人の女性たち(編集者、花屋のオーナー、モデル、主婦、会社員etc)
それぞれの日常がどこかで交差したり、関わったりする中で
恋愛、離婚、見合い、結婚、妊娠などに至る物語が淡々と語られる。
彼女たちが仲よしごっこしながら、心の中ではお互いについて
けっこうシビアなことを考えてたりする描写に現実味があっていい。

私はひとから「生活感がない」「結婚してるように見えない」とよく言われる
(自分ではそう思わないけど)
そういう自分のことを棚に上げて、この著者の小説に出てくる生活感のない女ってすごく苦手。
特に中心的人物である主婦の陶子って、タイプ的にもそうだし彼女の生き方というか
暮らしぶりが生理的に受けつけられない。
それにしても女ってしたたかで怖い生き物だな~って思う。
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by gloriaxx | 2004-11-04 18:17 | ★4

シネマ坊主 松本人志 日経BP社 ★★★★

いきなり「ライフ・イズ・ビューティフル」が10点満点だなんて書いてるからがっかりしたけど
(「ダンサー・イン・ザ・ダーク」も10点らしい。わからん)
「子供でひっぱって泣かす映画は嫌い」「(クサい)タイトルだけで観る気が失せる」
「宮崎駿を嫌いなのは感覚的なもんだから、誰がなんと言おうと嫌い」
などけっこう共感する部分が多かった。
すごく鋭い視点を持ってる反面、意外なとこが甘かったりするけど
これこそ感覚的というか好みの問題なんだろう。

私が「ライフ・イズ~」をキライなのは、
彼が言うように「世間でいいと言われてるものをクサして自分がもっと上の存在だと思わせたい」
などではなく、単にあの映画のセンスが寒すぎて笑いも泣きもできなかっただけ。
チャップリンとか欽ちゃんに通じるようなあざといセンスで苦手なのだ。

「シュリ」「A.I」についてはまさに同意見。「シュリ」はすごくもてはやされてたけど、
あれが韓国映画じゃなかったらあんなにヒットしなかったと思う。
韓国やイランなど目新しい国の作品ってことやミニシアター系作品だからって、
たいしたことないのにいい作品みたいな扱いをする風潮に私も常々うそ臭いものを感じてるから。
「A.I」は彼も言ってたようにジゴロ・ロボットを主役にするべきでしょう。
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by gloriaxx | 2004-11-04 18:10 | ★4

あなたには帰る家がある 山本文緒 集英社 ★★★★

大ヒット作「恋愛中毒」の方が後なのにこの作品の方が文章は上手く感じた。
登場人物にリアリティがあるし、存在感や生活感もちゃんと出ている。

「彼は下戸なので晩酌をしながらゆっくり食事をする習慣がない。
喫茶店でランチを食べるペースで妻の手料理を平らげる」という男の妻が
だんだん手の込んだ料理を作る気をなくしていくという件や、
共働き夫婦の家事分担の不公平さについての記述が的を得ていて共感した。
専業主婦の人が読めば、身につまされるのではという点も多々あり。
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by gloriaxx | 2004-11-04 18:06 | ★4

小説の秘密をめぐる十二章 河野多恵子 文藝春秋 ★★★★

大正15年生まれで現在N.Y在住の純文学作家による小説作法の本。
山田詠美がデビュー作「ベッドタイム・アイズ」を完成させるまで5年もかかっていたとは驚き。
谷崎文学「細雪」がいかに緻密にムダなく構成された小説かを
原文を元に検証していく章は読み応えがあった。
タイトルや登場人物の名前のつけ方、何人称でいくつの視点から書くかなど、
具体性があってためになることが多かった。
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by gloriaxx | 2004-11-04 18:01 | ★4

恋人よ 野沢 尚 フジテレビ出版 ★★★★

すごくハマってたドラマの原作小説。
佐藤浩市&鈴木保奈美、鈴木京香&岸谷五郎の二組の隣人夫婦。
保奈美と岸谷は私書箱文通恋愛を始めるんだけど、今だったら間違いなくメール恋愛のはず。
当時は文通という設定にさほど違和感を感じなかったけど、
なんと出版もドラマの設定も'95年で阪神大震災後なのだ。
あらためて時代の流れの加速度を思い知る。

運命的なものを感じる相手と出会ってしまったり、
理屈ぬきに惹かれあったりすることの不思議をあらためてしみじみ考えさせてくれるいい作品。
それと、すっかり忘れてたけど私が長瀬くんを好きになったのはこのドラマが最初だったっけ。
もう一回観たいな~長瀬くんだけでも♪
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by gloriaxx | 2004-11-04 17:57 | ★4

泳ぐのに、安全でも適切でもありません 江國香織 集英社 ★★★★

江國香織の小説は好きだけど、主人公の女性はあまり好きになれない。
実在していてもともだちになれないような気がする。
この短編集の中では表題作がよかった。
主人公は無職の同棲相手との別れを精神面では決心しているのに、
カラダの相性がよすぎて別れられない。
ろくでもない男ほどセックスの相性がいいというのは、私も思い当たるが人生の皮肉なんだろうか。
「うんとお腹をすかせてきてね」の二人の食生活は読んでいて怖くなった。
おいしいものを食べておいしい酒を飲むのは私も大好きだけど、毎日はダメだ。
肉体的にも危険きわまりないし、精神的にも弛緩してしまって絶対によくないと思う。
それにしても、カメラマンとディレクターのカップルで必ず毎日会ってこんな食事をして、
おまけにその前後にどっちかの部屋でセックスするなどという生活は現実には100%ありえない!
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by gloriaxx | 2004-11-03 14:26 | ★4

マンハッタンでキスKissing i n Manhattan デヴィッド・シックラー 早川書房 ★★★★

マンハッタンを舞台にした大人のためのおとぎ話的な短編集。
ダコダ・ハウスを思わせるような古いアパートメントのエキセントリックな住人たち
(まるでD・リンチの映画に出てくるような)が主人公で、
それぞれの物語の登場人物が少しずつ関わっているという構成。
設定が細部まで凝りすぎで多少退屈な部分もあるが、キャラクターやセリフは新鮮で魅力的。
新婚初夜から半世紀近くも夫を風呂に入れて体を洗い続けてきた夫婦の話「ジェイコブの風呂」、
女性に高価なドレスを買い与え、高級レストランでデートし、部屋へ連れてきてその気にさせながらドレスを引き裂いて鏡の前に立たせたりベッドに縛るだけで指一本触れないという、
幼児期にトラウマを負った性的倒錯者の話「マンハッタンでキス」がよかった。
とても映像的だと思ったらやはり映画化されるらしい。
スティーブ・ブシェミ、チャズ・パルミンテリ、ティム・ロスなどがキャスティングに浮かぶ。
監督は誰がいいだろう?
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by gloriaxx | 2004-11-03 14:24 | ★4

娼年 石田衣良 集英社 ★★★★

主人公は偶然の出会いから高級クラブのナンバーワン男娼になっていく20歳の男の子。
映画「A.I」のジゴロロボットじゃないけど、いい意味でこんなにプロに徹底していて、
なおかつ女性への理解力、包容力のある男娼がいたら一度お願いしたいと思うほど。
同じような世界や物語を書いても、村上龍ならギラギラと露悪的な印象を受けて辟易するし、
山口洋子ならもっとシビアで現実的になるが、この著者の視点や表現にはロマンスを感じる。
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by gloriaxx | 2004-11-03 14:12 | ★4

体験のあとAfter the hole. ガイ・バート 集英社 ★★★★

「穴」というタイトルで映画化された小説。
著者がパブリック・スクール在学中に発表し、英国の読書界に衝撃を与えたといわれる。
パブリックスクール卒業を控えた5人の男女が学校の一角にある忘れ去られた地下室に
「実験」と称して三日間閉じ込められる。
外界から遮断され、水や食料がなくなり5人は次第にパニックに・・・・というサイコスリラーだが、
4種類の文体使い分け、伏線の張り方、各人物の性格や心理描写の書き分け、
ラストのどんでん返し、尾をひく余韻など高校生が書いたとは思えないグレードの高さだ。
「実験」を仕組んだとされるマーティンの人物像は宮部みゆき「模倣犯」のピースを思い出させる。
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by gloriaxx | 2004-11-03 14:11 | ★4