カテゴリ:★3( 49 )

ブルータワー 石田衣良 徳間書店 ★★★

9.11、WTCが崩壊していく映像を見て受けた衝撃にインスパイアされたという作品。
超高層マンションに住み、脳腫瘍で余命わずかな主人公が
頭痛で意識を失い、精神だけ二百年後の世界に飛ぶ。
未来世界の地上は黄魔ウィルスに汚染され、
生き残った人々は高さ2000mの塔に暮らしている。
物理的な高度と社会的階層が比例する世界では極端な貧富の差が生まれていた。

個人的な好みの問題だと思うけど、ファンタジーが苦手なので途中で退屈になった。
とはいえ、こんな異色ジャンルでも作者の力量はさすがだと思う。
特に視覚的イメージの明確さは魅力のひとつだろう。
200年後の世界で主人公を守るボディガード、側近、下層民の少女の3人は
戦闘モノアニメ風のキャラクター像が完璧な形でビジュアライズできる。
(主人公の高慢で冷たい妻のイメージはなぜか韓国女優チェ・ジウ)
ゲームやアニメが好きな人ならかなり楽しめるのでは。

文化大革命の時代、一冊の書物もない環境で強制労働させられた知識人のエピソードは
米原万里「オリガ・モリソヴナの反語法」同様、本を愛する者にとって感動的。
('04 11 21)
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by gloriaxx | 2004-11-21 14:10 | ★3

古惑仔 チンピラ  馳 星周 徳間書店 ★★★

著者が「不夜城」で人気作家になって間もない頃、
映画の試写会の前に彼のトークショーみたいなのがあった。(映画はなんだったか忘れた)
すごい重そうな金のチェーンをつけていかつい感じだったけど、
意外なことに、喋るときちんとした人って感じだった。
彼の描く裏社会はダークさとロマンの配分がけっこう好き。
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by gloriaxx | 2004-11-04 18:04 | ★3

ねむい幸福 有吉玉青 幻冬舎 ★★★

二十代後半の夫婦。妻が突然家出し、理由も行き先も夫にはわからない。
やがて妻はある男の家にいることがわかり、毎日とりとめのない内容の電話をしてくる。
夫は妻に家出の理由、なぜ電話をしてくるのか、
これからどうしたいのかも尋ねることができない。
夫の視点から書かれているが、妻のキャラクターに好感が持てないし、
家出先の男との関係などが中途半端なままなのでラストに不満が残る。
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by gloriaxx | 2004-11-03 14:06 | ★3

奇譚カーニバル 夢枕 獏(編) 立風書房 ★★★ 

奇妙な話ばかりを集めた一冊。
夏目漱石の「夢十夜」は第三夜だけが強烈に印象に残っていたが、
改めて読むと第一夜が映像的でとてもいい。
鈴木清順監督の映画のような味わいに思える。
他には筒井康隆の「かくれんぼをした夜」横田純彌の「昇り龍、参上」
幸田露伴の「観画談」などがよかった。
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by gloriaxx | 2004-11-03 14:04 | ★3

ドラマティックなひと波乱 林 真理子 文藝春秋 ★★★

いつも思うことだけど、才能もお金もゴージャスな交友関係もあってうらやましい限り。
この人が母になったのはかなり意外だったが
「自分が母親になってもあちら側に与しなかったことで自分自身を見直した」
と書いているのはさすが。
ちなみに「あちら側」とは「女は子供がいなくては一人前ではない」
「子供がいない女は幸福になれない」という価値観を持った人たちである。
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by gloriaxx | 2004-11-03 13:52 | ★3

秘宝耳 ナンシー関 朝日新聞社 ★★★

この人のコラムは雑誌連載時に読むのがネタにシズル感があってベストなのだが、
単行本になってネタそのものが古くなってしまっている場合でも
視点が的を得ているのでリアルタイムとはまた違った説得力がある。
RIKACOが結婚・出産を経てある種「別格」感を漂わせるのに成功したとか
西田ひかるの扱いに「皇室報道」的なものを感じるとか、
日頃自分も思っていたことを的確に表現してくれてすっきり!
あらためて若すぎる突然の死が残念である。
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by gloriaxx | 2004-11-03 13:50 | ★3

日本語を書く部屋 リービ英雄 岩波書店 ★★★

日本語を母国語としないアメリカ人日本語作家による日本文学論と、
体験的日本語についてのエッセイ。
世界的視点から見ても究極的に異色な作家であり文学研究者だということがよ~くわかる。
しかし残念ながら私にあまり日本文学の素養がないのでけっこう難しく感じた。
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by gloriaxx | 2004-11-03 13:40 | ★3

軀/ 乃南アサ 文藝春秋 ★★★

高校生の娘がへそ出しルックのためにへそを整形したいと言い出したのをきっかけに
母も、就職を控えた大学生の長女も美容整形に踏み切る。
しかし一家の主である父親は誰の変化にもまったく気付かない・・・(「臍」)
女性の、適度に肉がついたやわらかな膝小僧に偏執的に魅せられた会社員が
痴漢の現行犯で逮捕される。妻は生まれたばかりの息子を連れて実家に帰り、
男の母はそれを嫁のわがままと思い込んで家庭は最悪の状況に・・・(「血流」)
など人間の体の一部分をテーマにした短編集。
いかにも今の日本にありそうな設定で興味深く読めるが、
かなり救いのない怖い結末で読後感は重い。
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by gloriaxx | 2004-10-12 17:22 | ★3

ゲームの名は誘拐 東野圭吾 光文社 ★★★

やり手の広告クリエーター・佐久間は、自分が中心となって企画を進めていた
自動車会社のキャンペーン・プロジェクトチームから外される。
彼を外すことを要求したのがクライアントである自動車会社・副社長だった。
徹底的にプライドを傷つけられた佐久間は副社長への復讐を考える。
偶然、副社長令嬢が深夜に家出するのを目撃した佐久間は彼女の後をつけ・・・

フツーにおもしろく読める娯楽小説。
女はデートやセックスだけの相手と割り切り、深いつきあいや結婚など考えたこともない、
一本につき3分の時間の無駄だからタバコは吸わない、など、
佐久間は人生すべてを計算しコントロールできると自負している徹底的な合理主義者。
ミステリー小説としてのテクニックは優れていると思うが、
主人公のキャラクターがステレオタイプすぎて魅力を感じないのが難点(他の登場人物も同じく)
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by gloriaxx | 2004-10-12 17:13 | ★3

チャイ・コイ 岩井志麻子 中央公論新社 ★★★

ベトナムへ旅した著者があるレストランのウェイターに一目惚れし、
強烈な刺激を受けて滞在中に一気に書き上げたという作品。
この著者の作品は全編岡山の方言で書かれたホラー小説「ぼっけえきょうてえ」しか
読んだことがなかったので、まずテーマの意外性に興味を持った。
作者がモデルかと思える女性作家がベトナムに旅し、レストランのボーイを一目見るなり
強烈な欲望にかられて、心の中で勝手に「愛人」と決めてしまう。そして、どうしても彼と
実際にセックスしたくていてもたってもいられなくなって再びベトナムへ行くという物語。
主人公の欲望の対象になるベトナム青年はかなり魅力的。
描写や表現はところどころ「山田詠美を意識してる?」と言いたくなるけど、奥深さが全然違う。
なので「男と女のことって当事者以外の人間にとってはどこにでもある陳腐な出来事だし、
当事者の心中の葛藤の90%は「独りよがりの思い込み」だよね~」
という突き放した視点で読んでしまい、ちょっと笑っちゃいそうでもあり、一種のストーカー?
とかも感じたり・・・反面、恋人である編集者との関係を描いた部分はリアリティや緊張感に
引き込まれた。一気に書き上げたくなった気持ちはわかるし、その勢いも感じるけど
もうちょっと熟成&発酵させたらもっと味わい深い物語になったかもしれない。
でも、これが日本人男性作家とベトナムのウェイトレスの話だったら大問題だよなぁ・・・
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by gloriaxx | 2004-10-11 23:27 | ★3