著者は「停電の夜に」のジュンパ・ラヒリらと共にニューヨーカー誌の「21世紀期待の若手作家20人」に選ばれた'63年生まれのコリアン・アメリカン。
主人公の初老の男性は在日コリアンとして生まれ、日本人の養子になり、後に日系アメリカ人となってニューヨーク郊外の小さな町で「ドク・ハタ」と呼ばれ人々の尊敬を集める。
著者は最初、第二次大戦中に日本兵のための慰安婦だった女性をテーマに書こうとして、
ソウルで元慰安婦の数名に長時間のインタビューをしたが、
真実があまりにも衝撃的なのでとても小説では表現できないと考え、
「ドク・ハタ」が日本兵として従軍中に出会う慰安婦とのエピソードとして織り込んだという。
訳者もあとがきで書いているように30代前半の男性が書いたとは思えないしみじみと深い
味わいのある物語である。N.Yタイムズのレビューにも書かれていたが、
私が好きなカズオ・イシグロに通じるものがある。
主人公は東洋人とわかっているのに、なぜか私のイメージではモーガン・フリーマン
(「セヴン」の時の)で、彼の養女サニーの成長後はダイアン・レイン(「パーフェクトストーム」の時の)慰安婦Kは柴崎コウ、看護士レニーはキューバ・グッティングJr、というキャスティング。
他の登場人物や風景などすべてにおいて視覚的イメージが充実した小説だった。