ピーコ伝 ピーコこと杉浦克昭/聞き手 糸井重里  日経BP社 ★★★★★

「好きな男がいても彼の心をつかもうとは思わない。体に対する欲望もない。
こっちが勝手に好きになったらできるだけのことをしてあげるけど見返りは求めない。
こうすること自体が私の欲望です」こう言い切れるピーコさんはすごいと思う。

私みたいな煩悩の塊は、自分が好きになったら相手にも好きになってほしいし、
逢いたい、声を聴きたい、抱き合いたいと欲望でいてもたってもいられなくなる。
左目を取ってからは自分がなにかに生かされてるような気がすると彼は言うが、
徹底してストイックで潔い生き方の根っこは、
ご両親の健全で節度のある育て方だということががよくわかる。
毎日がパーティーだったという若い頃の話もゴージャスでおもしろいけど、
ただの自慢話に終わらず生き方の美学が伝わってくる。

「自分も好きで、相手も好きになってくれて、抱き合ったりセックスしたら
それで愛がかなうといえるのか、違うと思うのよ。
それは欲望の実現であってそれだけじゃ愛じゃない」
この言葉の深さはハートを直撃である。
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# by gloriaxx | 2004-11-04 18:12 | 評価 ★5

シネマ坊主 松本人志 日経BP社 ★★★★

いきなり「ライフ・イズ・ビューティフル」が10点満点だなんて書いてるからがっかりしたけど
(「ダンサー・イン・ザ・ダーク」も10点らしい。わからん)
「子供でひっぱって泣かす映画は嫌い」「(クサい)タイトルだけで観る気が失せる」
「宮崎駿を嫌いなのは感覚的なもんだから、誰がなんと言おうと嫌い」
などけっこう共感する部分が多かった。
すごく鋭い視点を持ってる反面、意外なとこが甘かったりするけど
これこそ感覚的というか好みの問題なんだろう。

私が「ライフ・イズ~」をキライなのは、
彼が言うように「世間でいいと言われてるものをクサして自分がもっと上の存在だと思わせたい」
などではなく、単にあの映画のセンスが寒すぎて笑いも泣きもできなかっただけ。
チャップリンとか欽ちゃんに通じるようなあざといセンスで苦手なのだ。

「シュリ」「A.I」についてはまさに同意見。「シュリ」はすごくもてはやされてたけど、
あれが韓国映画じゃなかったらあんなにヒットしなかったと思う。
韓国やイランなど目新しい国の作品ってことやミニシアター系作品だからって、
たいしたことないのにいい作品みたいな扱いをする風潮に私も常々うそ臭いものを感じてるから。
「A.I」は彼も言ってたようにジゴロ・ロボットを主役にするべきでしょう。
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# by gloriaxx | 2004-11-04 18:10 | ★4

あなたには帰る家がある 山本文緒 集英社 ★★★★

大ヒット作「恋愛中毒」の方が後なのにこの作品の方が文章は上手く感じた。
登場人物にリアリティがあるし、存在感や生活感もちゃんと出ている。

「彼は下戸なので晩酌をしながらゆっくり食事をする習慣がない。
喫茶店でランチを食べるペースで妻の手料理を平らげる」という男の妻が
だんだん手の込んだ料理を作る気をなくしていくという件や、
共働き夫婦の家事分担の不公平さについての記述が的を得ていて共感した。
専業主婦の人が読めば、身につまされるのではという点も多々あり。
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# by gloriaxx | 2004-11-04 18:06 | ★4

古惑仔 チンピラ  馳 星周 徳間書店 ★★★

著者が「不夜城」で人気作家になって間もない頃、
映画の試写会の前に彼のトークショーみたいなのがあった。(映画はなんだったか忘れた)
すごい重そうな金のチェーンをつけていかつい感じだったけど、
意外なことに、喋るときちんとした人って感じだった。
彼の描く裏社会はダークさとロマンの配分がけっこう好き。
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# by gloriaxx | 2004-11-04 18:04 | ★3

小説の秘密をめぐる十二章 河野多恵子 文藝春秋 ★★★★

大正15年生まれで現在N.Y在住の純文学作家による小説作法の本。
山田詠美がデビュー作「ベッドタイム・アイズ」を完成させるまで5年もかかっていたとは驚き。
谷崎文学「細雪」がいかに緻密にムダなく構成された小説かを
原文を元に検証していく章は読み応えがあった。
タイトルや登場人物の名前のつけ方、何人称でいくつの視点から書くかなど、
具体性があってためになることが多かった。
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# by gloriaxx | 2004-11-04 18:01 | ★4

恋人よ 野沢 尚 フジテレビ出版 ★★★★

すごくハマってたドラマの原作小説。
佐藤浩市&鈴木保奈美、鈴木京香&岸谷五郎の二組の隣人夫婦。
保奈美と岸谷は私書箱文通恋愛を始めるんだけど、今だったら間違いなくメール恋愛のはず。
当時は文通という設定にさほど違和感を感じなかったけど、
なんと出版もドラマの設定も'95年で阪神大震災後なのだ。
あらためて時代の流れの加速度を思い知る。

運命的なものを感じる相手と出会ってしまったり、
理屈ぬきに惹かれあったりすることの不思議をあらためてしみじみ考えさせてくれるいい作品。
それと、すっかり忘れてたけど私が長瀬くんを好きになったのはこのドラマが最初だったっけ。
もう一回観たいな~長瀬くんだけでも♪
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# by gloriaxx | 2004-11-04 17:57 | ★4

泳ぐのに、安全でも適切でもありません 江國香織 集英社 ★★★★

江國香織の小説は好きだけど、主人公の女性はあまり好きになれない。
実在していてもともだちになれないような気がする。
この短編集の中では表題作がよかった。
主人公は無職の同棲相手との別れを精神面では決心しているのに、
カラダの相性がよすぎて別れられない。
ろくでもない男ほどセックスの相性がいいというのは、私も思い当たるが人生の皮肉なんだろうか。
「うんとお腹をすかせてきてね」の二人の食生活は読んでいて怖くなった。
おいしいものを食べておいしい酒を飲むのは私も大好きだけど、毎日はダメだ。
肉体的にも危険きわまりないし、精神的にも弛緩してしまって絶対によくないと思う。
それにしても、カメラマンとディレクターのカップルで必ず毎日会ってこんな食事をして、
おまけにその前後にどっちかの部屋でセックスするなどという生活は現実には100%ありえない!
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# by gloriaxx | 2004-11-03 14:26 | ★4

マンハッタンでキスKissing i n Manhattan デヴィッド・シックラー 早川書房 ★★★★

マンハッタンを舞台にした大人のためのおとぎ話的な短編集。
ダコダ・ハウスを思わせるような古いアパートメントのエキセントリックな住人たち
(まるでD・リンチの映画に出てくるような)が主人公で、
それぞれの物語の登場人物が少しずつ関わっているという構成。
設定が細部まで凝りすぎで多少退屈な部分もあるが、キャラクターやセリフは新鮮で魅力的。
新婚初夜から半世紀近くも夫を風呂に入れて体を洗い続けてきた夫婦の話「ジェイコブの風呂」、
女性に高価なドレスを買い与え、高級レストランでデートし、部屋へ連れてきてその気にさせながらドレスを引き裂いて鏡の前に立たせたりベッドに縛るだけで指一本触れないという、
幼児期にトラウマを負った性的倒錯者の話「マンハッタンでキス」がよかった。
とても映像的だと思ったらやはり映画化されるらしい。
スティーブ・ブシェミ、チャズ・パルミンテリ、ティム・ロスなどがキャスティングに浮かぶ。
監督は誰がいいだろう?
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# by gloriaxx | 2004-11-03 14:24 | ★4

優しく殺してKilling me softly ニッキ・フレンチ 角川文庫 ★★★★★

主人公アリスの視点から描かれているので、映画よりさらに心理描写などにリアリティがある。
アリスをカマトトや悲劇のヒロインぶった女にしてないところに好感が持てるし感情移入できる。
出会った瞬間から理屈ぬきでのめりこんでしまい、理性では別れたほうがいいとわかっていても
それができない一種熱病のような恋愛について、映画のページで感想を書いたが、
原作はもっと現実的で、アリスが仕事や友人や趣味といった自分の世界を放り出して
アダムとの関係にハマっていくプロセスがリアルに描かれている。
ラストも原作のほうがシビアだがカタルシスがあってよい。
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# by gloriaxx | 2004-11-03 14:17 | 評価 ★5

ショットガンと女 藤原信也 集英社 ★★★★★

もし私が男で、20年ばかり早く生まれていたら
こんな風に世界を旅してこういう本を書きたいと思う。
沢木耕太郎「深夜特急」を読んだときもそう思ったけど。

恥ずかしい話だけど、私はずっとこの著者を「クマさん」と呼ばれている造形作家と混同していたのである。(名前が似てない?)
写真はもちろんだけど文章が上手。感情の抑制、言葉の選び方など嫌味が無くセンスがいい。
「かわいそうな幸福」「テキサスのドーナッツ」が好き。ヘミングウェイにまつわる何篇かもよかった。
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# by gloriaxx | 2004-11-03 14:15 | 評価 ★5