著者は一級建築士。プライベートや仕事で泊まったり、
泊まる予算がなく憧れの建築を見学しただけという世界中の魅力的なホテルや
そこで出会った人々についてのエピソードをエッセイにまとめたもの。
書くのが本業ではない人だとはとても思えないほど上手で、
読むことが純粋に心地いい文章である。
書いたもの(特にノンフィクション)には人柄がはっきり出るものだが、
すごく魅力的で好感が持てる。
本を読んで人柄に惚れたのは景山民夫、沢木耕太郎、山下マヌー以来だ。
プロフィール写真を見るとなかなかいい男で、しかも建築家。(B'z稲葉浩志の従兄弟らしい)
それが世界各国の有名ホテルでのエピソードを書くのだから、
かっこつけたり、美化したり、自分に酔ったり、という要素が鼻についてもおかしくないのに
そんなものはかけらもない。また、恥をかいたり、失敗したり、よこしまなことを企てた経験なども正直に書いてちっともイヤミがない。
それでいておしゃれで粋な読み物にまとまっているのだからすごい才能だ。
こんな素敵な本を読むと、旅したい欲求が押さえ難くムラムラと湧いてくる。
著者自身の撮影による写真もプロ並みのクオリティでものすごくセンスがいい。