瑠璃の海 小池真理子 集英社 ★★★

高速バス事故で夫を失った36歳の萌と、10歳の娘を失った作家の遊作。
被害者遺族の会で出会った2人の悲劇によって結び付けられた恋のゆくえ。

恋愛話だけで400ページ強を読ませるのは著者の筆力の証明か。
主役男女のキャラクターや生活臭のなさ、恋愛とセックスへののめりこみ方を
読者が引いてしまわないギリギリのラインで描いているところはさすが。
特に遊作という人物は下手な作家の手にかかればキザで陳腐な男になりそうだが
なかなか魅力的な中年男として描かれている。
萌が亡夫との生活の中のなにげないシーンや会話を思い出す部分がいい。
長崎・平戸が舞台の部分は風景描写や地理・歴史的説明がやや冗長で退屈。
ラストへなだれこむあたりからどうしても「失楽園」(日経新聞連載時に部分的に読んだのみだが)
を思い出してしまった。
障害もないのに、完璧だと感じる状態のまま愛をまっとうするために
あえて死を選ぶという美学はわたしには理解しがたい。

-不思議だった。一度ならず肌を合わせたことのある男は、時が流れ、
疎遠になってみると 肌を合わせなかった男よりも遥かに他人になってしまう。(中略)
後には他人行儀な礼儀正しさだけが残されて、
もはや永遠に近づくことなどできなくなったように思われてくるのだった。- 
このリアリティ(特に中略の部分)はさすが恋愛小説の名手!
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by gloriaxx | 2004-09-19 23:26 | ★3


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