残虐記/桐野夏生 新潮社 ★★★★ '04 7 11

高校一年の時に著名な文学新人賞を取ってデビューし、
次々と問題作を発表しては多くの賞を最年少記録に塗り替えて受賞した作家が失踪。
そして彼女が残した原稿が彼女の夫の手によって担当編集者に送られてきた。
そこには25年前に起きた一年余にわたる少女誘拐・監禁事件の被害者が
自分であるという驚くべき事実が書かれていた。
誘拐犯である若い工員と被害者だけが知る「真実」とは・・・

どうしても新潟の誘拐・監禁事件を思い起こさせる。
本作の被害者は11歳。
1年強を日光を完全に遮断した汚い部屋に監禁され、
その部屋の下にある工場で働く若い男のペットか玩具のように扱われて過ごす。
彼女は恐怖感よりもまず先に、不潔な環境と誘拐犯の行為への
強烈な生理的嫌悪を感じるのだが、
新潟の被害者はこの主人公の10倍もの年月をこんな状況で
過ごさなければならなかったことに思いが及んで気が遠くなる。

センセーショナルな素材から誰もが想像するほど中身は単純ではなく、
それゆえいっそう深く暗く恐ろしい物語。
この著者は人間の業というか醜悪さを生々しく描くのがほんとうにうまい。
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by gloriaxx | 2004-09-20 16:08 | ★4


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