アイドルとはふわふわのショートケーキの上の苺ではなく
固く焼いたパイ生地の上でカスタードクリームの海に沈みかけたベリィ。
元・ヤクザの関永に「アイドルになってみないか?」とスカウトされた少女リン。
やがて彼女をめぐるすさまじい争奪戦が・・・
ページをめくる手がとまらないおもしろさ&爽やかな読後感。
まずキャラクター設定がバツグンにうまい。
元・ヤクザの関永、リンはもちろん、ゲイの大物美容師・仁、関永の片腕・小松崎・・・
各人物の個性がくっきり際立っていて、ライフスタイル、趣味嗜好、
物の考え方に至るディテールまで完璧に練り上げられているので
登場人物が物語の中で自然に動いて読む側を引き込み感情移入させる力がある。
わたしは「成り上がりモノ」やプリティ・ウーマン的「女の変身モノ」が大好きなので
リンがプロの指導によってエクササイズとダイエットで身体を作り、
メイクと美容の手ほどきを受けて磨かれていくプロセスはわくわくする。
ただ、リンが芸能界の頂点にのし上がるところまで描いていないのは残念・・・・
著者は良識的で「人間性善説」な人だというのが伝わってくる作風。
普通はクサくなってしまいそうなセリフがそうならないのも著者の人柄ゆえだろう。