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世界の終わり、あるい始まり/ 歌野晶午 角川書店 ★★★★

東京近郊で発生した小学生誘拐事件。
父親の勤務先に届いたメールの身代金要求はわずか200万円だった。
犯人からの連絡はそれきり途絶え、誘拐された男の子は射殺死体で発見される。
やがて第2、第3の誘拐事件が起き、最初の犠牲者と同じ町内に住む富樫修は
小学6年生の息子・雄介の部屋であるものを見つけてしまったことから
自分の息子が事件に関わっているのではという疑惑に苦しむ。
-顔見知りの子どもが誘拐されたと知って驚き、悲しみ哀れむ一方で
わが子が狙われなくてよかったと胸をなでおろしたのは私だけではあるまい-
自らを冷酷な人間だと自覚する主人公。
息子が犯人である可能性が大きくなるにつれ彼は様々な想像をする。
凶悪犯罪の加害者一家として世間からの糾弾、非難にさらされるより一家心中を選ぼうと決心したり、罪のない妻や娘を不憫に思い、自分の手で息子を殺すしかないと決意したり、
息子が犯した罪のために自分まで殺人者になって人生を棒に振りたくないと悩んだり・・・

記憶にも新しい現実の少年犯罪の数々を思い出す。
子どもを持つ人なら被害者、加害者両方の家族の心情に思いをはせるだろう。
どっちにならないとも言い切れない今の世の中、
子供がいないわたしは「どっちに転んでも子供を持つって怖い!」と心底思う。
主人公の苦悩、犯罪を起こした少年の告白、事件発覚後のマスコミや世間の攻撃など
リアリティも説得力もあり、一気に読ませる。
冒頭から引っ張る力に比べてラストは不完全燃焼な気もするけれど
読者それぞれに答えを委ねているのだろう。
by gloriaxx | 2004-09-28 22:12 | ★4


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