東電OL殺人事件/ 佐野眞一 新潮社 ★★★

桐野夏生「グロテスク」を読むまで「昼はエリート美人OL、夜は売春婦」と
マスコミがセンセーショナルに報道した被害者について、
わたしはもっとゴージャスな退廃と堕落像を思い描いていた。
叶姉妹のようなビジュアルイメージで、金
と社会的地位のある男だけを相手にする高級娼婦を想像していたのだ。
ところが被害者渡辺泰子の実像を知って仰天。
渋谷・円山町の裏路地で直接男に声をかける「立ちんぼ」としてわずか数千円で
浮浪者まがいの男相手にでも商売し、ビルの陰、駐車場の暗がり、
路上でも平気でセックスしたという。
さらに、道にしゃがんで小用を足し、拾ったビール瓶を換金し、
コンビニで小銭から百円玉→千円札→一万円札と「逆両替」したり、
終電の中で菓子パンを食い散らかす姿も目撃されていたらしい。

彼女がなぜこんな化け物みたいな女になってしまったのか、
そのあたりをもっと深く掘り下げてほしかったのだが、
本書はあくまでも事件の背景と経過をメインにしているのでやや物足りない気もした。
著者の取材力と、取材対象の人間性や生活感もきちんと伝える筆力はすごいが、
被害者のことを「泰子の神々しいまでの大堕落」だの
「すべてをひれ伏させてしまう乞食姿のマリアとなった渡辺泰子」だの
必要以上に神聖化しすぎるのが鼻につくのと、
ことあるごとに事実と被害者の間に因縁めいたつながりを感じようとする
思い込みの強さに逆に白けさせられることも少なくなかった。
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by gloriaxx | 2004-09-28 22:22 | ★3


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