日系ブラジル人マーリオはデリヘル(という呼称でいいのかな?)のドライバー兼用心棒。
毎日客が指定したホテルまで娼婦を送迎し、トラブルがあれば暴力を使って処理する。
祖国にいる日本人の祖父、金を稼ぐため日本にきた同胞たち、
自分を「あいのこ」と差別する日本人たち、
自分を取り巻くすべてに怒りと憎しみを抱えて生きるマーリオ。
関西のヤクザと中国マフィアの覚醒剤取引の情報を掴み、一攫千金を夢見たことから
彼の泥沼のような人生は地獄の逃避行となってゆく。
移民社会、風俗業、ヤクザやマフィアなど、ダークな世界を描かせたら天下一品。
徹底した暴力描写が満載なのに、辟易せずどんどん物語に引き込まれるのは
登場人物が魅力的で、どんな端役でもキャラクター設定が完璧だからだろう。
主人公マーリオは女性に口でしてもらうことに異様なほど執着する男なんだけど、
もう機会あればいつでもどこでもって感じでほんとに呆れる。
さらにラスト間近では「おいおい、この期に及んでまだ?」と妄執すら感じてしまう。
著者の作品ではいつも、男は女が自分を裏切るだろうと見抜いているくせに
ダメもとで最後の望みをかけて予想通りの結果になるというパターンが多い。
女の本質をよくわかっているな~と感心する。
男性作家の作品では往々にして「んなわけないやろ~」的に白けるような、
きれいごとみたいな女性像、男女関係が描かれていて一気に醒めることがよくあるけど
馳 星周の場合はリアルで説得力があり、そういう臭みがないのがいい。