おわらない夏 小澤征良 集英社 ★★★★

著者は指揮者・小澤征爾の娘。父がボストン響の指揮者だったため、
生まれてから毎夏を過ごしたマサチューセッツ州タングルウッドでの美しい思い出、
家族や家族同様に暮らした人々のことを書いたエッセイ。

私の「今度生まれ変わったら願望」のひとつに「有名人の娘として生まれる」というのがあるが
その思いをいっそう強くさせる本である。評論家の斎藤美奈子氏がアエラで本書のことを
「不幸がまったくない小公女物語」と書いていたが、まさにその通り。
著者は両親や家族同様の使用人たちからたっぷり愛情を注がれ、
周りには意地悪な人やタチの悪い人は一人もいず、
彼女がさらっと「父の友人」と言ってのける人物たちはジョン・ウィリアムズ、
ウィントン・マルサリス、パバロッティ、スピルバーグetc・・・というそうそうたる顔ぶれ!
これをおとぎばなしと言わずにいられようか!
小澤征二って家庭人としてもとてつもなくすばらしい人のようだ。
著者は多少なりともファザコンの要素があるはず。
一方、母親は二児の母となってもなお、家庭内で「美しい女王様」として君臨する
エキセントリックで生活感のない女性という印象。
著者の母に関する描写もなんとなく距離を感じる。

アカデミックな環境で物心両面に恵まれ、周囲の人々に愛され、受け入れられ、
挫折も屈折もトラウマもなく育った(としか思えない)著者が
少女の頃のままのような口調で語る子供時代の思い出は絵に描いたような幸福の象徴。
「はいはい、よかったですね~お幸せですね~」としか言いようがない。
ひねくれ者の私、ひがみ根性でなんとかケチつけてやろうと読み進んだが、
悔しいことに著者が ほんとに素直にまっすぐ育った「いいひと」ってことがわかるし、
きらめくようなエピソードを描写する文章も魅力的なのでよけい複雑である・・・
そりゃこんな環境で育ったら心のきれいな人間になるわな、世の中ってほんと不公平だわ。
帯のコピーを「うっとりするほど輝かしい特別な物語」と江國香織が書いているのだが、
この人選もいかにもで「ま、そりゃそうでしょうよ」って気分だ。(私って性格悪いな~)
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by gloriaxx | 2004-10-12 17:27 | ★4


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