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ボヴァリー夫人/ 文:姫野カオルコ 絵:木村タカヒロ 角川書店 ★★★★★

フローベールの「ボヴァリー夫人」が姫野カオルコの新解釈による文章と
木村タカヒロの絵のコラボレーションでおしゃれに生まれ変わった大人のための絵本。

19世紀フランスの片田舎で裕福な農家の娘として育った美貌のエマは
まじめだけが取り得の医者・シャルル・ボヴァリーの妻となるが、
夫の地味で実直な性格とぱっとしない容姿に「退屈な男!」と幻滅し、
華やかな刺激を求めて婚外恋愛に走る、という話。

旧かなづかいの岩波文庫版「ボヴァリー夫人」は実家の本棚にあった。
フランク・ヴェデキント「春のめざめ」やミルボウ「小間使いの日記」
谷崎潤一郎「蓼食う虫」、三島由紀夫「美徳のよろめき」etc...
読書好きだった母の蔵書はわたしも子供の頃かたっぱしから読んだので
これも読んだはずだがまったく記憶にない。

姫野カオルコは著書の中で繰り返し恋愛経験がほとんどないことを書いているが、
その割りに恋愛や男女関係の本質をズバッと斬る視点は鋭い。
自身で経験してないからこそ頭脳で分析できるのだろうか。

金持ちの遊び人ロドルフがエマをモノにするまでの手管を「様式美」と評し、

~「どうして?」 注意。様式美では、ここですぐ女の問いには答えないこと。~
~ ロドルフは自嘲するように鼻から息を抜く。
 「・・・それは、ぼくは悪い男だからですよ」様式美はいつも自分を悪い男だと言う。~

エマとロドルフの不倫をバッサリ一刀両断。

~愛ではない。エマとロドルフの逢瀬は。それは官能だ。肉欲だ。猥褻だ。
 そんなこと、わかっていたエマには。もちろんわかっている。ロドルフは。~

ロドルフに捨てられた直後、かつてお互いに好意をもっていたレオンと再会したくだりでは、

~エマの心身は、ナイロンになっていた。
 離婚直後やフラれた直後、よく人の心身はナイロンになる。発火しやすい。~

参りました!って感じだ。
木村タカヒロの絵がスタイリッシュで官能的ですばらしい!
('04 10 12)
by gloriaxx | 2004-10-12 22:41 | 評価 ★5


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