-セックスなんて11分間の問題だ。
脱いだり着たり意味のない会話を除いた「正味」は11分間。
世界はたった11分間しかかからない、そんな何かを中心に回っている-
ブラジルの田舎町に育った美しい娘・マリーアはダンサーになるためスイスへ。
やがて現実に失望し、プロの娼婦になった彼女が到達したのが冒頭の3行。
日記をつけ、故郷に帰った日のために牧場経営に関する本を読み、
淡々と仕事に徹するマリーアは恋に落ちないことを自らに課していたが、
ある日、運命的な出会いをしてしまう。
2つの文体で構成された不思議な味わいの小説。
「プリティ・ウーマン」文学バージョンという感じだが
どの時代、どの国が舞台であっても違和感のない普遍的な物語である。
地の文はシンプルで、人生の真実を短いフレーズで的確に表現し、
一方、マリーアが書く日記の文体は文学的で美しく暗示的。
客観的に自己と現実を見つめて何をすべきか、すべきでないかを決断する
マリーアの知性と潔さは爽快だ。
あらかじめ揶揄しておいてパターン化を外すハッピーエンディングのセンスも◎!
-恋愛感情が相手の存在よりもむしろ不在と連動していることに気がついた-
こんな風にはっとさせる一文があちこちに、しかもさりげなく散りばめられている。
心に余裕のあるときにじっくり味わいながら読むのがおすすめ。
('04 11 11)