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PAY DAY!!! ペイ・デイ!!!/ 山田詠美 新潮社 ★★★★

あの9.11から1年以上の年月を経なければ出版できなかったと著者が語っていた。
アフリカ系アメリカ人の父と、イタリア系アメリカ人の母の間に生まれた
男女の双子(高校生)が主人公。
両親は離婚し、息子は父の故郷である南部サウス・カロライナへ、
娘は生まれ育ったN.Yで母と暮らす。
そして2001年9月11日、マンハッタンのWTCに二機の旅客機が突っ込んだ。
世界中を怒りと悲しみに巻き込んだ事件は、双子や周囲の人々の運命も大きく変えていく・・・。

何を題材にしても、この著者の作品は恋愛や男女関係についてのバイブルだ。
大上段に構えたり、小難しい理屈をこねたり、気負ったりせず、
さらっと真理を語るスタイルは実にCOOL!
ほんとにかっこいいとは、難しい言葉を並べたり奇をてらうことじゃないのがよくわかる。
引用したい箇所は枚挙にいとまがないほどである。
本作は恋愛よりも家族間の愛情にウェイトを置いているので、
より普遍的で多くの人の共感を呼ぶのでは。

-相手の弱みが愛を深める動機じゃなくなった。気がついたらただの欠点に見えていた。-
-「セックスって動物的なことじゃないか」
「でも、そこから生まれる感情を知らなかったら人間とは言えないわ」
 (中略)ついでに言えば、そのことで傷ついたことのない奴も、私は人間扱いしないのよ」-
-人との関係に永遠なんてあり得ない。もしも永遠を作り出したいと思うなら、
その答えは今にしかない-
-好きな人たちのことはなんでも知りたくて一所懸命だった。
でも、すべてを突き詰めていくこともないんだなぁって。
 理解するってことと、すべてを知るってことは違うよね。
 私が見たり感じたりするものが、目の前にいる人のすべて。-
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by gloriaxx | 2004-09-30 20:57

わたしの鎖骨/ 花村萬月 毎日新聞社 ★★★

バイクでカーブを曲がるとき、夫が車体を倒しすぎたために
後部シートから投げ出されて鎖骨を折った妻。
しかし夫は妻よりも真っ先に愛するバイク(BMW)に駆け寄った・・・・
表題作「わたしの鎖骨」など5篇の作品集。

中ではディスコの生バンドで単なる職人として音楽をやる若者の鬱屈と
恋愛に対する純粋な心情を描いた「ハコの中身」がよかったかな。
著者の作品を読むのは初めてだが、この作品集に関しては予想していたより
ダーティでもなく読みにくくもない。でも、まだ好きかどうか判断つきかねる。
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by gloriaxx | 2004-09-30 20:51 | ★3

アンダーソン家のヨメ/ 野中 柊 福武書店 ★★★

ニューヨーク在住の著者が第10回「海燕」新人文学賞を受賞した「ヨモギ・アイス」と表題作を収録。
著者自身の体験をベースにしていると思われるが、
どちらもアングロサクソン系アメリカ人男性と国際結婚した日本人女性が主人公。
「ヨモギ・アイス」では夫は詩人をめざしながら大学で非常勤講師をし、
「アンダーソン家のヨメ」では妻の両親が国際結婚に難色を示したので夫は大学院を途中でやめて国務省に就職。妻である主人公の方は無職(専業主婦)なのだが、
家事は一切せず昼まで寝るなどグータラなライフスタイル。
そのくせ「アメリカでは男も家事をするのがあたりまえでしょ」
「日本人の妻が黙って夫に仕えると思ったら大間違いよ」と権利だけは主張しまくりのいいご身分。
さらに、自分のアイデンティティが大事だから結婚してもアンダーソンという姓を名乗りたくないという。これに対しては義弟のガールフレンドに
「でも、あなたには姓を変えて困るような仕事もキャリアも別にないんでしょ」と
嫌味ではなくさらっと自然に言われ、本人も自分が何に執着しているのかわからなくなる。
「自分のアイデンティティ云々」という漠然とした理由で夫の姓を名乗りたくないという女性の気持ちはわたしもよくわからない。
だって生まれた時の性だって親から自動的に押し付けられたものじゃ?
それより自分で選んだ結婚相手の姓を名乗る方が、自分自身の「選択」という要素が入ると思うんだけどねぇ・・・
ま、人それぞれだし、こういう問題はあまりつっつくと怖いのでこのへんで・・・
国際結婚問題、複雑な人種問題などが等身大的視線とカジュアルな表現で書かれていて興味深いが、一人称の口語体で、しかも視点が登場人物全員にコロコロ変わるので読みにくいのが難。
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by gloriaxx | 2004-09-30 20:48 | ★3

お洋服クロニクル/ 中野 翠 中央公論新社 ★★★★★

衣食住の中では着るものに最も執着が強いという著者が、
その頃着ていた洋服を切り口にして当時の世相、流行、風俗なども含め、
生きてきた時代を書いた「超個人的年代記」。イラストも著者。

著者は私より一回り以上年上なので、さすがに少女期や思春期の話は「時代が違う・・・」
という感じだけど70年代頃からボチボチおもしろくなってくる。
私はまだ子供だったので実体験として共感はないけど雑誌「アンアン」創刊、
ベルボトムやホットパンツの流行は記憶に残っている。
あの頃の風俗を子供の目線で見て「大人になったら私も学生運動したり、ヒッピーになったり、
マリファナ吸ったり、同棲したりするんだろうか・・・・」などとぼんやり考えていたものだった。
80年代に入ると、一世風靡したDCブランド、テクノポップ、刈上げヘアなど
まさに実体験としてシンパシーの嵐!
自分自身の当時のことが、忘れていたことまでリアルによみがえってくるのに驚いた。
私は著者の作品のファンだけど、タイプ的にはかなり違うと思っていたのだが、
世の中の女性の大多数が染まった「JJファッション」「ハマトラファッション」
「聖子ちゃんカット」などとは無縁(というより憎んでいた)という共通点を発見。
しかも刈上げてしまった恥ずかしい過去を持ち、貧乏だけどおしゃれはしたい若かりし頃、
文化屋雑貨店のアイテムや古着に助けられたというのも同じ・・・・
著者の駆け出しライター時代の話もかなり共感を覚えた。
で、なんとなく安心した。私もきっと「おばさん」にはならずにすむだろうな~と。
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by gloriaxx | 2004-09-30 20:41 | 評価 ★5

世界の中心で、愛をさけぶ/ 片山恭一 小学館 ★★★

ブームになるかなり前に読んだので正直言って後で驚いた。
タイトルがキャッチーで惹かれたのだけど、パクリらしいし、
著者は他のタイトルをつけていたのを編集者が強引に変えたとか。
著者は'86年に文學界新人賞を受賞してデビュー。
う~ん、私の中では「ギリギリ」って所に位置するかな。
アキが美少女で優等生で心もキレイで「できすぎ」感があるので最初ちょっと醒めるけれど
朔太郎の祖父や親友の大木龍太郎というキャラクターが魅力なので救われた感じ。
私的キャスティングでは大木は山本太郎.

アキが「好きな人と一緒に暮らすことと、別な人と暮らしながら好きな人のことを思い続けるのとどっちが幸福かしら」と聞く。
どんなに好きな相手でも一緒に暮らすと嫌なことも目につくし、ケンカもするし、
年月がたつと何も感じなくなるのでは、というアキに朔太郎はこう言う。
「僕はもっと前向きに考えるな。いま相手のことがすごく好きなら10年後にはもっと好きになっている。最初は嫌だったところまで好きになる。そして100年後には髪の毛一本一本まで好きになっている」
高校生でこんな風に考えられるなんて、なんていい男!
「好きな人を亡くすことはなぜ辛いのか」ということに対して朔太郎の祖父が語る言葉がとてもよい。
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by gloriaxx | 2004-09-30 20:35 | ★3

リレキショ/ 中村 航 河出書房新社 ★★★

’02年第39回文藝賞受賞作品。
「姉さん」に拾われて彼女の弟「半沢 良」になった「僕」はガソリンスタンドで深夜勤務をしている。
ある夜、原付バイクでフルフェイスのヘルメットを被って現れた女の子が「僕」に手紙を渡す。
彼女は「ウルシバラ」と名乗る大学受験生だった。
「僕」と「姉さん」と、姉さんの女友達「山崎」との平和な日々、そして「ウルシバラ」からの手紙・・・・

淡々として、特に事件も起こらないこういう小説も悪くはないけれど、
私にはこの小説の「淡々」や「毒のなさ」がやや作為的に感じられた。
「姉さん」と女友達「山崎」はなかなかリアリティがあって魅力的なキャラクターだが、
三十代前半(たぶん)で描写によるとけっこういい女っぽいのに、
なぜか既に女を降りてる感があって「もう恋愛はいいの。それよりうまい酒」みたいな、
無理に達観した感じがわざとらしい。
「僕」はいい若いモノなのに未熟というか成熟する前に既に枯れてるのか、全然色気がない。
「姉さん」との間に性的な気配もないのも私にはかえって不自然に感じられた。
彼に好意を寄せる「ウルシバラ」はおたく系不思議ちゃんぽいし、姉さんたちは女を超越しているし、
「僕」にとっては無理して男にならなくてもいい、ある意味すごく楽な環境なのだろう。
でも、1969年生まれの著者が描く世界がこんなんでいいのかな~?ってちょっと気になる。
良くも悪くも、ハードな現実に背を向け、居心地のいいぬるま湯的世界に漂う昔の少女漫画を思わせる。

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by gloriaxx | 2004-09-30 20:28 | ★3

百万年のすれちがい/The story of a million years ディヴィッド・ハドル/早川書房★★★★

中身はいいのにダサすぎる装丁でものすごく損をしてる本だ。
センス悪いだけじゃなく内容とも合ってないし・・・
ロサンゼルス・タイムス評「今年最高のラブストーリー」、
アン・ビーティーはじめ多くの作家が絶賛、翻訳権独占etc...と謳うほど力入れるなら、
もっと洒落た装丁にして宣伝とかうまい仕掛けを作れば
そこそこ売れる本になる要素はあるのに・・・

ハイスクール時代から知りあいの2組の夫婦の物語。
4人共、実は心密かに親友のパートナーに惹かれていたり、
愛し合っていても永遠にわかりあえない部分や秘密を持っていたり・・・
各章ごとに語り手が変わる一人称スタイルで、同じ出来事や、誰が誰をどう思っているかなど
それぞれの視点によって微妙にズレているのもリアリティがあり、
淡々としながら奥深い心理描写がバツグンである。
国を超えて、結婚しているひとなら必ず何箇所かは共感する部分があるのではないだろうか。
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by gloriaxx | 2004-09-30 20:22 | ★4

趣味は読書/ 斎藤美奈子 平凡社 ★★★★

世間でベストセラーと言われる本は数多い。ところが周囲にほとんど読んでいる人がいない。
みんなタイトルは知っていて、気にはなっているが
どうやら時間とお金をさいてまで読みたくないらしい。
そこで筆者が’99年7月~’02年10月まで40数冊のベストセラーを読み、
ジャンル別に評論したもの。
「冷静と情熱のあいだ」「五体不満足」「プラトニックセックス」「鉄道員」「LOVE論」「永遠の仔」
「チーズはどこへ消えた?」「だからあなたも生きぬいて」
「ハリー・ポッターとアズカバンの謎」etc・・・
「光に向かって100の花束」みたいな、なんで売れてるのか、正体すらさっぱりわからん怪しげな本もちゃんととりあげ、売れているからくりの推理と解明も・・・

私は斉藤美奈子氏の評論のファンだが、本書も素人にもわかりやすい語彙と表現で
数々のベストセラーの中身、著者、出版背景、なぜ売れたか、
どんな読者層が、何を目的に、どういう読み方をしているのかなどを解剖していく。
本書もけっこう下世話だったり意地悪な視線が大活躍。誰も気付かなかったことや、
みんなが思っているのに言いにくいことをズバッと書いてくれるので痛快だ。
「五体不満足」「プラトニックセックス」「だからあなたも生きぬいて」などはその代表。
「そうそう!」と共感したり、「なるほど~」と感心したり、自分が読んだ本はもちろん、
読んでなくて興味のあった本についても読んだと同じ、いや、ただ読むより詳しくなれる。
本が売れない昨今、出版界の裏事情なども詳しく書かれていて興味深い。
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by gloriaxx | 2004-09-30 20:15 | ★4

リリー&ナンシーの小さなスナック/ ナンシー関/リリー・フランキー   文藝春秋★★★★

ナンシー関とリリー・フランキーが雑誌連載で対談したものをまとめた本。
消しゴム版画で有名なナンシー関はあいかわらず独特の鋭い観察眼。
誰もがなんとなく感じていて、言葉にできなかったことを絶妙な表現で見事に確信をつく。
あらためて早すぎる死が残念なひとだ。
でも、死期が近かったせいか、頑固な理屈っぽさがやや目立つ気もした。
リリー・フランキーはフジTV「ココリコミラクルタイプ」でもおなじみだが、見かけの優男風から想像してたのとは違い、かなりファンキーで波乱万丈な人生を送ってきたようで驚いた。
友達ならいいけどつきあったらしんどそう・・・自分が好きになったらもっとしんどそう・・・・
世代が同じせいもあるのか、カラオケの項はめちゃくちゃ共感して
ゲラゲラ笑いながら読んでしまった。

~カラオケってバクチといっしょでやってる時期はやりたくて仕方ないけど、
いったんやらなくなるとまるでやりたくない(リリー)~
~最近の曲って知ってるつもりで歌っても展開がA・A・Bで終わらない。
最後になって急にCが出てきたり(ナンシー)~
~「おはロック」歌うようなお元気系カラオケの好きな人とは行かない。
カラオケはみんなで歌うものと勘違いしてる人と行くとキツイんですよ。
メドレー入れてひとり一曲ずつ歌ったりして(リリー)~
~アニメの歌しか歌わない人が生み出すダレはもう取り返しがつかない(リリー)~
~うまい下手より、何を歌うかを見られるところが一番のキモですからね(ナンシー)~
~イントロ流れてきて「いいの入れたね」って言われるのが一番シブいんですよ(リリー)~
~(いまだにカラオケやらない人って)かたくなに携帯電話を持たない人よりかたくなですね(リリー)
あ~またカラオケ行きたくなってきた!
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by gloriaxx | 2004-09-30 20:10 | ★4

リアルワールド/ 桐野夏生 集英社 ★★★★

高3の夏休み、4人の少女たちはいつものように携帯電話で特に必要もない連絡を取りあっていた。
ところが、トシコの隣人で進学校に通う同い年の少年が母親を金属バットで殺し、
トシコの自転車と携帯を盗んで逃げたことをきっかけに彼女たちの運命は大きく変化していく。
携帯やメールで少年と接触した彼女たちは、自分たちそれぞれが抱えている問題とその解決方法が表面化したかのように少年の逃亡を助けたり、行動を共にしたり、警察に通報したりする過程で自身の問題に直面していく。

最初は女子高生特有のバカそうな口調そのままの一人称文体と、
彼女たちが交わす乱暴な会話にうんざりしかけたが、読み進むうちに
「さすが桐野夏生、恐れ入りました」と一気に引き込まれ3時間ほどで読みきった。
主人公トシコは、自分たちは子供の頃からキャッチセールスや勧誘にさらされ、
ストーカー被害や援助交際のターゲットにされ、自分を守るための最低限の武装は架空の存在になって心の周囲に高い壁をはりめぐらせることしかないと信じている。
4人の中では最もわかりやすい可愛さを備え、健全な女子高生に見えるキラリンは、
出会い系サイトやナンパで男と遊びまくりながら、心の中では男を軽蔑し、
振り回すことで自分の優位性を確認しようとしている。
ユウザンはレズであることを家族にも友人にもカミングアウトできず、新宿二丁目にも居場所がないことを知って絶望。
テラウチは哲学的な聡明さゆえに、本来なら憎しみの対象となる母親(仕事と恋人を持ち、心は家族にない)さえ理解・超越することでさらに人生に失望している。

親世代が考える「傷つく」ことと、自分たちの「傷つく」ことはもはや次元が違うというトシコの諦観、
「男の馬鹿さと優しさは反比例する法則がある。馬鹿な男はあの時にやさしくないからすぐわかる」というキラリンのセオリー、
「断っておくが、私の”頭がいい”というのは勉強ができることとは違う。抽象的思考ができることだ。
私はあらゆる人間関係から浮いている。だから私は自分を抑えまくる」と、わざと馬鹿なふりをするテラウチの独白などはっとするほどの鋭さ、深さが随所に散りばめられている。
少女たちは表面的に仲良く振舞っていてもお互いにほんとうの自分をさらけださず、
深い部分で人生そのものになんの期待も希望も持っていない。
母親殺しの少年はごく自然にサカキバラやあらゆる少年犯罪を身近に感じて育った世代で、常にそれらの事件報道を意識している。
こういう世代がこれからの日本のメインストリームになるのかと思うとなんだかお先真っ暗だ・・・。
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by gloriaxx | 2004-09-30 20:01 | ★4